静岡茶の製造方法(蒸し製緑茶製法)vol.1 ― 酸化酵素について

今回は、日本茶「蒸し製緑茶製法」についてお話をしていきます。
かなり長い話なので次のように4部作に分けて解り易く、簡単に書いてみたいと思います。

Vol.1 酸化酵素について ---今回

Vol.2 「蒸し」と「蒸気」について

Vol.3 原料である生葉について

Vol.4 製法、製造技術について

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さて、第1部では、緑茶の製造に大きく関わる酵素について理解を深めます。この酵素がわかると、緑茶だけでなく、発酵茶の紅茶や烏龍茶などの半発酵茶についても、理解が深まります。

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まずは、お話を進める上での前提条件を設定します。

私こと静岡のお茶屋 葉桐は、抹茶を扱うことが少ない静岡のお茶屋なので、ここでは一般的な煎茶(深蒸し煎茶を含む)や玉露等の蒸した後、揉みながら乾かして作るお茶に関してのお話をしていきます。

また、蒸し製緑茶の話をご理解していただくために、お茶の葉が持つ「酸化酵素」についてお話をします。この「酸化酵素」についての理解が抜けてしまうと、蒸し製緑茶製法の話が見えにくくなりますので、しばしお付き合いください。

それでは始めます。緑茶の原料であるお茶の生葉(新芽を摘採したもの)には、「酸化酵素」が存在しています。この酸化酵素は文字通り、お茶の葉を「酸化」させる働きをします。この酵素が働くとお茶は発酵(本当は酸化しているのですが、なぜか茶業界では昔から発酵と言われている)し始めます。

ところで、日本の緑茶は、生葉をすぐに加熱して酸化酵素の働きを止める、「不発酵茶」です。

この発酵を最後までさせるとお茶は「紅茶」になり、途中で止めると止めたときの発酵の進み具合などにより、「包種茶」「烏龍茶」「鉄観音茶」等の半発酵茶になります。これらの半発酵茶の場合、途中で酸化酵素の働き(発酵)を止める手段として、多くの場合「釜炒り」の熱によって残った酸化酵素の働きを失活させています。

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≪写真はGABA茶(ギャバロン茶)、嫌気処理後に「釜炒り」で酸化酵素を失活させています≫

 

一方、これから話を進めて行く「蒸し製緑茶」では、酸化酵素が仕事をする前に、生葉を「蒸気で蒸す」事でその酸化酵素の働きを止めます。

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蒸し製緑茶の製法では、原料となる「生葉」と、その生葉の酸化酵素を失活させる「蒸気」が主役となります。

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…今回vol.1はここまで。次回は、「蒸気」について考えたいと思います。

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静岡のお茶屋 葉桐でした。