静岡茶の製造方法(蒸し製緑茶製法)vol.3――原料である生葉

さて、前回までvol.1で「酸化酵素」、vol.2で「蒸し」と「蒸気」、で蒸し製緑茶の製法について話を進めて参りました。

 

今回vol.3では、製造時のもう一方の主役原料である「生葉」について考えてみましょう。話の進行上様々な話に飛びますが、あくまでも生葉を中心に考えていきます。

DSC07395-足久保岩崎蒼風.jpg

 

生葉とは文字通りお茶の生葉で、お茶を製造する際の原料となるものです。

葉桐本社のある安倍川筋の通称“本山地区”では、前年の二番茶後から整枝や施肥などの管理が始まり、夏から秋にかけて翌年の新茶を芽吹く「親葉」の葉層を育てていきます。まさに酷暑の中の作業で大変な作業です。

 

しかしながら、この夏から秋への管理作業の差が

翌年の一番茶に大きく影響をします。

いわばこのお盆までに何をしたかの差が、

来年の一番茶に出る、ということです。

 

00164.jpg

 

優秀な生産家さんたちは暑さもなんのその、

せっせと管理作業を進めています。

どんな施肥や管理作業が良いのかについては、

長くなりますので日を改めます。

 

 

さて、こうして丹精した茶園では優秀な新芽が育ちます。

またそうでない茶園でもそれなりの新芽が育ちます。

 

これがきゅうりや大根なら、

ここで「勝負あった」ノーサイドになります。

丹精組は98点、そうでない組は62点としましょう。

36点差で丹精組の「勝ち!」です。

 

この点差を活用して後程、お茶品質についての話をします。

良く覚えておいてください。

08626.jpg

 

また、この点数は其々の生葉が

「持っているもの」と考える事ができます。

そしてこの点数は摘採直後の物で、茶の樹から摘採され、

地面から離れてしまった後は決して増えることのない、

減点への一方通行になることをご承知おきください。

 

 

しかしながらお茶では、この段階では

お茶を作るための原料「生葉」でしかありません。

ここから「蒸し製緑茶」への製造が開始され、

その先で市場やお客様に評価されるので、

試合は始まったばかり、

サッカーで例えたならば「前半10分過ぎ」くらいでしょうか?

 

では、原料としてどんな生葉が優秀なのかを考えてみます。

これはただ単に農産物として考えるのでは片手落ち、

あくまでも原料としての視点が重要になります。

 

いくつか項目がありますので箇条書きにしてみます。

写真:茶園伸びた新芽

1、畑で芽の生育が揃っている事

2、目指す製品(荒茶)に適した摘採がなされている事

3、摘採後の生葉の鮮度管理が、茶園及び工場で万全である事

4、摘採後、製造にかけるまでの時間が長くならない事

 

09624.jpg

と主なものを上げてみました。

 

これをご覧になってお分りだと思います。

年間の栽培管理して原料となる生葉を摘採する「2」のところから、

「製造」が始まっています。

当然3も4も製造の初期工程で有ります。

すでに生葉は「農産物」ではなく、「製茶原料」であるわけです。

09724.jpg

今までは意識の高い工場でも、

製造は工場で生葉を受け取ったところからだと考えていました。

最近になって大きな共同工場などでは、

摘採時期や摘採の仕方について

工場側から要望を出すようになってきました。

とても良い傾向だと思います。

 

さて、2、3,4が製造工程であることは

ご理解いただけましたでしょうか?

 

この後、お茶の本格的な製造が始まります。

先程の二つのお茶の点差が、どうなっていくのか。

5205.jpg

 

今回は、ここまで。次号「Vol.4製造技術の差」に続くです。