拝見における「五感」の使い方②

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こんにちは。
静岡は台風の気配もまだ遠く、真っ青な空が見えております。
熱中症にならないよう、水分補給はお忘れなく。

本日も引き続き、お茶の拝見についてお話しします。

前回までに「拝見」および「拝見の仕方」、
禅問答のような
五感は全て香味の鑑定のためにvol.1
について書きました。
今朝はその「vol.2」として、
拝見において「あまり良くない印象」を
持ったときの一例を、ほぼ同じ文章で書いてみます。

繰り返しになっている部分はご容赦ください。
まさに「拝見」とはこの繰り返しなのです。

では、始めます。


五感とは視覚、触覚、嗅覚、味覚、聴覚です。
このうち嗅覚、味覚が「香味の鑑定」に使われるのは、
そのとおり皆さんにもご納得だと思います。

では残りの三感のうち、
最も情報量の多い視覚からお話します。

視覚は文字通り目で見た情報、
色とか形とか大きさとかを感じる感覚器官です。
お茶の拝見でも「色」や「形状」を目で見て鑑定しています。
ここまでは多少感じ方が違ったとしても、
誰が見てもほぼ同じように見えているはずです。

ここからお茶屋の領域が始まります。

目で見た色や形状から、そのお茶の製造過程を知るのです。
製造時に何をしたのか、しなかったのか?
はたまた何がおきたのか。
製法由来の「香味」の特性をこの時点で想像しているのです。

例えば色たくにやや冴えが無く、
製茶の形状に「曲り」が認められる場合は、
製造工程のどこかで「上乾き」が起きた
(正確には上乾きをさせてしまった)お茶であると判断。
結果「茶葉に水を残した」お茶であり、
香味に「ムレ」があるだろうと予測します。
ここで注意したいのは「残した水」とは、
水分計で測ることのできる「水分」とは別物、
専門用語で言うところの「芯水」のことです。


次に触覚です。
触覚は手などで触れたものの風合い、
堅いとか柔らかいとか、すべすべしている、
ざらざらしている、重い、軽い、思ったより重いとか、
細かいとか大きいとか、を感じる感覚器官です。
お茶の拝見でも「手触り」でお茶を鑑定しています。
ここまでは多少感じ方が違ったとしても、
誰が触ってもほぼ同じです。

ここでのお茶屋の領域は次のようです。

手触りから、そのお茶が製造過程で何をされてきたのかを
察知し、その製法由来の「香味」の特性に結びつけています。
例えば良く乾燥していて、がっちりとした手触りで、
上から掴むと手のひらよりも大きく握れる感触のお茶は、
製造工程のどこかで「上渇き」が起きた
(正確には上乾きをさせてしまった)お茶であると判断。
結果、「茶葉に水を残した」お茶であり、
香味に「ムレ」があるだろうと予測します。
ここで注意したいのは先ほどと同じく「残した水」とは、
水分計で測ることのできる「水分」ではなく「芯水」のことです。


最後は、聴覚です。
これは触覚との合わせ技での活用です。
お茶を握ったり戻したりする際の
お茶とお茶が擦れるかすかな音から、
生産家さんのお茶作りに対する「考え方」や
その「技量」を推量します。

そして、その製造法由来の「香味」の特性を見抜いています。
例えば「がさがさ」と聞こえれば、
「蒸し製緑茶」の製造方法を
忠実に再現出来なかったお茶で、
製造中「上渇き」をさせてしまったお茶であると判断。
「揉んで乾かし、揉んで乾かし」がどこかで
「揉んで乾かし乾かし、揉んで乾かし乾かし」
になってしまい、結果茶葉に水を残し、
香味に「ムレ」があるだろうと予測します。

拝見ではこれらのことを瞬間に官能、判断した上で、
湯を注し嗅覚味覚で自分の「三感」が
正しかったことを確認していく、
いわば実証実験をやっているのです。

以上、五感についてvol.2でした。

五感で感じる感覚の組み合わせはほぼ無限です。
そのため、何年やってきても飽きるということはありません。
拝見場に立つたびにどんなお茶と出会えるのか、
お茶の先にいらっしゃる生産家とお会いできるのか
毎日がワクワクの連続です。