「拝見」と一致するもの

今日は茶葉の比較をしてみました。これまでに出来上がったお茶を見れば、生産家が何をしてきたのかが判ると言ってきました。写真の茶葉をご覧ください。
 
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真ん中の茶葉は色や形が揃っていて、多くが葉っぱの原型をとどめています。
右は葉の色が濃かったり薄かったり、形も破砕が見られます。
これらに比べ左は葉の色はさらに不揃いで、葉も細かくなってほとんど原型を留めていません。この葉殻を見て摘採時期や摘採方法、製法など次のようなことが見えてきます。
右:個人生産家単一園または複数園 一番茶一芯四葉期 機械摘採 普通煎茶製法
中:個人生産家単一園 一番茶一芯二葉期 手摘摘採 普通煎茶製法
左:複数生産家複数園 一番茶一芯四葉期 機械摘採 深蒸し煎茶製法
 
実際には茶葉を手に取り、葉の香りを嗅ぎ、湯出し拝見でも香気、味などを見るので、さらにさまざまの事がわかります。例えば摘み取った方や揉んだ方の性格や、工場の清掃状態、茶園の管理状況などが手に取る様に判ります。
 
 
以上、湯出しした茶葉を観察してみました。今日わかったことは
① 手摘みは原葉を揃えることが出来る 
② 単一園の方が原葉が揃う 
③ 普通煎茶製法の方が葉っぱの原型がとどまる。  この3点でした。
 
この様な拝見技術を駆使して葉桐では美味しいお茶をお届けしています。それもお客様が安心してお使いいただける様、様々な角度からお茶を吟味しています。
ガッテンしていただけましたでしょうか。
葉桐の普通煎茶はこちらからご覧いただけます。 →https://hagiricha.com/
 
それでは、またお会いしましょう。
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静岡のお茶屋 葉桐 お茶の見方「五感は全て香味鑑定のために」vol.2

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こんにちは。前回までに「拝見に使う道具」や「拝見の仕方」、「五感は全て香味鑑定のために(良い印象)」と書き進めてきました。

今日はその 「五感は全て香味鑑定のために」vol.2 として、拝見時見本茶に対して「あまり良くない印象」を持ったときの一例を、前回と同じような文章で書いてみます。

繰り返しではないかと感じたらご容赦ください。「拝見」とは、まさにこの繰り返しなのです。

 

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では、

前回も申し上げましたが、五感とは視覚、触覚、嗅覚、味覚、聴覚の五つを指しています。このうち嗅覚、味覚が「香味の鑑定」に使われるのは、そのとおり皆さんにもご納得だと思います。

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では残りの三感はどうなのか?  最も情報量の多い視覚からお話しを進めてみます。

 

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視覚は文字通り目で見た情報、色とか形とか大きさとかを感じる感覚器官です。お茶の拝見でも、離れたところから遠目に見た「色」や「艶」、手元では「形状」を含めながらさらに「色」「艶」を見てみます。

ここまでは多少感じ方が違ったとしても、誰が見てもほぼ同じように見えているはずです。でもお茶屋は、ここまでで拝見の約85%を終了しています。目で見て集めた情報を瞬時に分析し、そのお茶の製造過程を知るのです。製造時に何をしたのか、しなかったのか?はたまた何がおきたのか。製法由来の「香味」の特性をこの時点で連想しているのです。

 

例えば色たくにやや冴えが無く、製茶の形状に「曲り」が認められる場合は、製造工程のどこかで「上乾き」が起きた(正確には上乾きをさせてしまった)お茶であると判断。結果「茶葉に水を残した」お茶であり、香味に「ムレ」があり、水色もやや濁りがちでやや赤味がさす色だろうと予測、この時点で仕入れ対象から外れるので、緊張感が一瞬解けます。

ここで注意したいのは「残した水」とは、水分計で測ることのできる「水分」とは別物、専門用語で言うところの「芯水」のことなので、いわゆる「湿気た状態」とは違います。

 

 

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二つ目は触覚です。触覚は手などで触れたものの風合い、堅いとか柔らかいとか、すべすべしている、ざらざらしている、重い、軽い、思ったより重いとか、細かいとか大きいとか、を感じる感覚器官です。お茶の拝見でも「手触り」でお茶を鑑定しています。触覚からの情報は、先ほど申し上げた「視覚」からの情報と併せて複合的に分析しています。

ここまでは多少感じ方が違ったとしても、誰が触ってもほぼ同じです。でもお茶屋は見本茶との僅かな時間の手触りから、そのお茶が製造過程で何をされてきたのかを察知し、その製法由来の「香味」の特性に結びつけています。

ちなみに私の場合左手の方が敏感な様で、右手では気づかない情報も、左手では感じ取ることができます。例えば、見た目の色や形状には問題がないお茶でも、触れた時に良く乾燥していて、がっちりとした手触りで、上から掴むと手のひらよりも大きく握れてしまうような感触のお茶は、製造工程のどこかで「上渇き」が起きた(正確には上乾きをさせてしまった)お茶であると判断。その結果、「茶葉に水を残した」お茶であり、香味に「ムレ」があるだろうと予測します。やはりこの時点で仕入れ対象から外します。

ここで注意したいのは先ほどと同じく「残した水」とは、水分計で測ることのできる「水分」ではなく「芯水」のことです。

 

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残るは、聴覚です。

これは触覚との合わせ技での活用です。見本茶を握ったり戻したりする際のお茶とお茶が擦れるかすかな音から、生産家さんのお茶作りに対する「考え方」やその「技量」を推量します。

そして、その製造法由来の「香味」の特性と結び付け、品質鑑定しています。例えば「がさがさ」と聞こえれば、「蒸し製緑茶」の製造方法を忠実に再現出来なかったお茶で、製造中「上渇き」をさせてしまったお茶であると判断。「揉んで乾かし、揉んで乾かし」がどこかで「揉んで乾かし乾かし、揉んで乾かし乾かし」になってしまい、結果茶葉に水を残し、香味に「ムレ」があるだろうと予測します。この微妙な差を一瞬にして見抜いています。

 

お茶屋の拝見、仕入れではこれらのことを瞬間に官能、品質や仕入れ対象としての如何を判断した上で、その確認作業として湯を注し嗅覚味覚を拝見するのです。拝見に使う道具から4回にわたって書いてきましたが、拝見とは視覚、触覚、聴覚をもってほぼ完了、味覚、嗅覚は追従のための実証実験をやっている、と言うことができます。

 

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以上、五感についてvol.2でした。

こんにちは。

これまで、私のブログでは「拝見に使う道具」および「拝見の仕方」で、お茶屋が品質鑑定をする際に行っている「拝見」について簡単に書いてきました。

今日は、その「拝見」をしているときに自分の感覚、五感をどのように使っているかについて、まとめてみました。禅問答のような内容になってしまいますが、静岡のお茶屋の神髄、仕入れに携わるお茶師の技の一端を披露させていただきます。

題目は、お茶の見方「五感は全て香味鑑定のために」です。それでは、しばしお付き合いください。

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ヒトの五感とは視覚、触覚、嗅覚、味覚、聴覚、この五つを指しています。

このうち嗅覚、味覚が「茶の香味鑑定」に使われるのは、鼻で香りを嗅ぎ口で味わうのだから、当然のこととしてご理解いただけることと思います。

では、視覚、触覚、聴覚についてはどうでしょうか?

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視覚から考えてみましょう。文字通り目で見た情報、色や形、大きさを感じる視覚、お茶の拝見でも「色」や「形状」を目で見て鑑定しています。ひとにより多少感じ方が違ったとしても、誰が見ても「お茶」ほぼ同じように見えています。

でも、ここでお茶屋の目は、見たお茶の色や形状から、そのお茶の製造過程を一瞬にして見抜いています。製造時に何をしたのか、逆にしなかったのか?はたまた何がおきたのかをその色艶、形状から読み取っています。製法由来の「香味」の特性を、見た目の形状や色、艶から連想しているのです。

たとえば艶(色たく)が非常に冴えているお茶は、その製造工程の全般にわたって「しとり」をもって揉まれたお茶であるため、「原料茶葉の良さを存分に引き出せたお茶」であり、香味良好だろうと判断します。

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では、触覚について考えてみます。手で触れたものの風合い、たとえばかたいとか柔らかいとか、すべすべしているざらざらしている、重い軽い、思ったより重いとか、細かいとか大きいとか、を感じるのが触覚です。

お茶の拝見する場合も、手触り(触覚)でお茶を鑑定しています。ひとにより多少感じ方が違ったとしても、誰が触ってもほぼ同じ、堅い物はかたく、小さなものは小さいと感じているはずです。

ここでもお茶屋の手、指先は、触ったお茶の手触りから、そのお茶が製造過程で何をされてきたのかを一瞬にして連想しています。そして、その製法由来の「香味」の特性を見抜いています。

例えば乾燥しているのに湿っているような手触りで、指の間をすべり落ちる感触のお茶は、

製造工程の全てで「しとり」をもって揉まれたお茶であると判断。結果、余分な熱や、風を食うことなく揉まれたお茶であり、香味良好だろうと連想します。

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最後、五番目は聴覚です。

聴覚については触覚や触覚との合わせ技で活用します。お茶を握ったり戻したりする際のお茶とお茶が擦れるかすかな音から、生産家のお茶作りに対する「考え方」やその「技量」を推量、その製法由来の「香味」の特性を見抜いています。同時に、同じ静岡県内でも、各産地間にある製法に対する考え方の、僅かな違いなどを勘案しながらの作業です。もちろん「一瞬」の作業です。たとえば「さらさら」と聞こえれば、「蒸し製緑茶」の製造方法を忠実に再現できる技量の持ち主が揉んだお茶で、製造中「しとり」をもって揉まれたお茶であると判断。結果「揉んで乾かし、揉んで乾かし」がしっかりされた、香味良好なお茶だろうと予測します。でも、多分本当は音など聞こえていないはずです。それでも聴覚を使っているのです。

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出合った見本についてこれらのことを瞬時に官能、各感覚器官からの各種情報を一瞬にして分析した上で、仕入れ対象になると判断した場合のみ湯を注します。嗅覚味覚で自分の視覚触覚聴覚での感触、判断、連想が正しかったことを確認し、仕入れていくのです。

 

 

以上、五感を使ったお茶の香味鑑定についてでした。

 

お察しのようにそれぞれの感覚に数十の感想があり、拝見による鑑定結果はそれらの組み合わせによるためとてもここに書ききれないものになります。

今回は視覚、触覚、聴覚で良い感触を得たケースを書いてみました。でも実際には、あまり良くない感触を覚えるケースも多く、「その場合はどうなんだ」との疑問が残ったことと思われます。次回は「良くない感触を覚えた」で書き直してみます。比べてお読みいただけると、雰囲気が伝わりやすいかもしれません。また生産家やお茶に携わる皆さんにとっては、大きなヒントになるかもしれませんね。

 

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本日は、お茶の見方「五感は全て香味鑑定のために」でした。

さて、今日はお茶の見方「拝見の仕方」についてお話します!

お茶の品質を見るための「拝見」では、前回お話した「お茶を拝見する道具」を使って、お茶の香味などの内質、形状や色目などの外観(見た目の美しさ)を観察し、評価していきます。

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まずは「拝見盆」を使っての外観を見ていきます。

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外観を見る時のポイントとして、つやが有り透き通ったように見えるもの、形にゆがみが無くスッと伸びている物、葉がつぶれずにこまかくなっていない物が、優秀な技術で揉まれた美味しいお茶です。

こんな感じの茶葉です。この様に美味しいお茶は透明感があります。

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よく、緑色が濃く「あおい」と言われるお茶が、良いと言われます。しかしながら、実際には色よりも色沢が重要で、優秀な技術で揉まれた、優良な美味しいお茶はあくまでつやが有り、透けたように見える物です。

お茶だから透けては見えないのですが、「透けて見える」ように感じるお茶が良いお茶、美味しいお茶の指標になります。

次に、拝見盆の見本茶を手で触ったり、握ったりします。お茶の手触り感触などは品質鑑定の際には大きなポイントなので、茶葉を手に取り、茶の色、光沢、形状を見て行きます。ここでは、乾いているのに「しとり」を感じるもの、感触にガサつきがないものが優秀な技術で揉まれたお茶です。

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この際、拝見盆の底部に破砕した粉状のお茶が無いことが、重要な条件となります。

 

次に、審査(拝見)茶碗を使って内質、香味や水分の残り具合等を見て行きます。

荒茶の拝見の場合、4g(または3g)を「拝見茶碗」にとります。僅か4gなので、サンプリングの偏りがない様、見本茶全体を平均してとります。

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余談ですが、これは単純な作業ですが、私たちプロの指先は同じ見本茶から様々な「4g」を取り分けることが出来ます。

 

 

拝見茶碗のお茶に「熱湯」を注ぎます。「1 2 3 4…」とテンポよく数えながら、いつも一定のタイミングで湯を注ぎます。

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・沸騰した熱湯であること

・同じテンポで注ぐこと  この2点はこの内質の拝見には重要な条件です。

 

注いだら間髪入れず「すくい網」で茶葉そのものの香気を鑑定します。間髪いれないタイミングでしか発揚しない香気があるので、要注意です。

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ここではスッと鼻の奥に抜けて通るような香気を持つお茶が、優秀な技術で揉まれた美味しいお茶です。香りの種類を嗅ぎ分けるのではなく、香りの性質に注目しての鑑定が重要です。

同時に茶碗の中で開き始めた茶葉の様子を、観察します。出来るだけ葉がこまかくなっていないことが良い技術で揉んだ、美味しいお茶の品質を保証してくれます。

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またほぼ同時に「銀の匙」で拝見茶碗の茶をすくい、啜り飲みでお茶を口中全体に広げて味を鑑定します。

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ここでは香りと同じく、雑味が無く嚥下した後に「戻り香」が鼻に戻ってくるお茶が、優秀な技術で揉まれた美味しいお茶です。

甘味やうま味など、味のパーツに囚われ過ぎずに、戻り香まで含めたトータルの味わいを鑑定することが重要です。

最後に茶葉をよけて水色(すいしょく)を確認します。ここでも「水色」とは書いていますが、実際には色に囚われるのではなく、濁りが無く、透明であることが優秀な技術で揉まれた美味しいお茶です。とにかく透明感が大事です。

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見たいお茶を、拝見盆に空けてから最後までの一連の作業を、1分足らずでこなしていきます。一瞬にしてこのお茶の生い立ち、製造過程を見抜き、お客様に一年間変わらぬ品質でお届けするためにかかせない作業です。言い替えると、生産家が丹精して作ったお茶を活かすも殺すもお茶屋の「拝見」に掛かっている、ということになります。

 

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以上が静岡のお茶屋 葉桐の「お茶を見る 拝見の仕方」でした。

静岡のお茶屋 葉桐が拝見に使う道具について

 

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今日は、前回の「葉桐の火入れについて」の際、最後に少しお話ししたお茶の「拝見」作業から、その道具についてご紹介してみます。

 

お茶屋がお茶を仕入れる際に行う「荒茶」の品質鑑定作業を総称して、「拝見する」とか「拝見にかける」と言います。その「拝見」に使う道具がこちらの写真です。

まずこちら、荒茶見本を入れる拝見盆と見本茶葉です。

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白い拝見茶碗と、もちろん茶葉

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すくい網と匙

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必要があれば急須

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それから、熱湯も忘れてはいけません。

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しゅんしゅん沸いている無味無臭な熱湯、そして薬缶も大事なアイテムです。このように使う道具は、いずれも簡単な道具ばかりです。

 

拝見での主役は、お茶の葉と、五感。人間の五感、“視覚” “触覚” “嗅覚” “味覚” “聴覚”をフルに活動させて、お茶の香味について様々な鑑定を一瞬のうちに済ませます。

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ポイントは、ここでの五感は全て“香味の鑑定”に使うということです。目で見たお茶の形状や色も、手触りも、お茶を手に取った時のかすかなお茶がすれる音も、全ては「香味」の見極めのための情報なのです。

以上、静岡のお茶屋 葉桐の「拝見に使う道具」についてでした。

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拝見の方法や、その時に主役である五感については、また改めて、次回ご紹介させていただきます。

 

静岡のお茶屋 葉桐の火入れについて

さて、今日はお茶の「乾燥・火入れ」について考えます。

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先日お届けしたブログ、「葉桐の仕上げ」の中でも書いた「火入れ」について簡単に書いていきます。

ご存知の様に静岡のお茶は一部の番茶類を覗き、5月~6月に一年分のお茶が収穫されます。そのお茶を一年通じて美味しく飲んでいただき、安定した美味しさ(品質)でお届けするために、荒茶に含まれる余分な水分(5~7%)を、「乾燥」させることで取り除いていきます。

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このとき乾燥のついでに、お茶を焙煎することで香味を変性させる作業を、茶業界では「火入れ」と呼んでいます。

畑で栽培した茶葉を蒸して揉んで「荒茶」にするときに取り切れずお茶の中に残してきた余分な水分をとる作業が「乾燥」で、その延長線上にあるのが「火入れ」です。

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乾燥も火入れも「荒茶」が持つ余分な水分を上手く活用することで、様々な作業結果が得られるわけです。もちろん仕上げでの磨き方によっても作業結果は異なってきます。

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抜くのか、蒸らすのか、焼くのか、お茶の状態や商品特性に合った乾燥・火入れを見極めるには、お茶をどれだけ見てきたか、それもプロの目で見てきたのか、が重要になってきます。

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当社では、お茶の持っているものをしっかり引き出して、最高の状態でお客様にお届けするために、荒茶それぞれに最適の乾燥・火入れをします。

以上、静岡のお茶屋 葉桐の「火入れ」についてでした。

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それぞれに最適な火入れをするために必要な、荒茶の特性を見抜く「拝見」、お茶の鑑定については、またの機会にご紹介します。

お茶の品質を支えるお茶師の拝見技術

今回はお茶屋が日常的に行っている「拝見」について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

拝見についての基礎的なお話を書いたブログへのリンクを、文末に貼ってあります。ご参照ください。

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「お茶の拝見」と言うと、いくつかを比較する「相対評価」が一般的です。例えば、仕入れの際にA,B,C3点を比べ、求めている商品特性にむく品質を有し価格的に適合するものを選んだり、各種「茶品評会」のように出品されたものに順位を付けたりする場合は、この相対評価でお茶を拝見するようです。

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並べて拝見し、品質的な優劣を順位付けするわけです。こんな風に。

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言い替えると、右と左を比べどちらが「良いお茶」なのかを見極めているわけです。ここで言うところの良いお茶とは、美味しい、見た目がきれい、水色が良い、儲かるなど様々な基準があることで、相対評価により商品にあった原料を仕入れすることが出来るようです。

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さて、本日はこのようにお茶を選ぶための拝見技術「相対評価」ではなく、お茶の品質を左右し、その製法はもちろん栽培や摘採の仕方まで決定するための拝見技術「絶対評価」についてご一緒に考えてみましょう。

 

まずは、この茶葉をご覧ください。2014年産 玉川横沢荒茶です。太く長く大きな出来上がりです。その上、茶葉の表面には艶があり「てかてか」に光っています。また、白い茎も見当たらずとても「青い」お茶に揉み上がっています。
これは、摘採した生葉と製造がぴたりと一致し、なおかつ栽培でこの芽を作り出した時にだけ出来るベストな状態、申し分なく非の打ちどころのない荒茶です。この場合は生産家をただただ褒めちぎるだけです。

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次の写真は2014年産 東頭(とうべっとう)荒茶です。長く大きな出来上がりでがやや細くなってしまっています。また、白い棒は見当たりませんが、艶が無く、青く染まるはずの茎が一部「飴色(赤みを帯びた褐色)」になっています。これは栽培、摘採でとれた良い芽をこなしきれず、ほんの僅か「むれたところ」を作ってしまったためにあらわれる現象です。

この場合は生産家にいくつかの質問をした上で、逆にいくつかのアドバイスをしていきます。この荒茶の場合に質問する項目

  • 摘採した新芽の熟度
  • 蒸し方
  • 機械への投入重量
  • 粗揉機の熱風温度、風量、回転数、出し度
  • 揉捻機の加錘と揉捻時間
  • 中揉機の排出設定温度と出し度

この質問に対する答え次第でアドバイス内容は複雑に違ってきます。

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3枚目は2014年産 玉川大沢です。太く長く大きな出来上がりです。その上、茶葉の表面には艶があり「てかてか」に光っています。また、白い茎も見当たらず「青い」お茶に揉み上がっています。しかしながらやや平たい葉が多くなっています。業界用語で「平打っている」と言い、精揉機での加錘のタイミング、掛け方が微妙にずれた時に出てくる症状です。

この場合は生産家にいくつかの質問をした上で、逆にいくつかのアドバイスをしていきます。この荒茶の場合に質問する項目

  • 生葉の熟度
  • 投入生葉量
  • 中揉機の排出設定温度と出し度
  • 中火台での待ち時間(中揉機から取り出し精揉機に入れるまでのタイムラグ)
  • 精揉機の使用は3手それとも4手?(4手中)
  • 精揉機の釜設定温度
  • 回転数
  • 加錘タイミング及び移動タイミング

この質問に対する答え次第でアドバイスする内容は違ってきます。

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以上の様に荒茶の外観を拝見することで、生産時に起きた多くの事象を知ることができます。その中で「人為」で起こっている事に対しては、「人為」での対策が可能であるため、ここで拝見したことが生産家の技術向上、荒茶品質向上に大きな影響を持ち、ひいては製品品質を支えるために欠かせない業であることがご理解いただけるものと思います。

新茶時期のお互いに忙しい時に、毎朝繰り返す生産家とお茶師の無駄にも見えるやりとりこそが、葉桐がリリースする静岡茶の最高品質を支えているのです。

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以上、お茶の拝見「絶対評価」についてでした。

拝見についての基礎的なお話は

「お茶を拝見する道具」:http:// https://hagiricha.com/tea/2014/11/post-6.html

「お茶の拝見の仕方」:https://hagiricha.com/blog/2014/08/140804haiken.html

「拝見における五感の使い方①」:https://hagiricha.com/blog/2014/08/140805haiken.html

「拝見における五感の使い方②」:https://hagiricha.com/blog/2014/08/140807haiken.html 

に詳しく書きました。ご参照ください。